MooN 〜Holistic Healing Room〜

2度呪詛をかけられて死にかけた話。。『1度目』6

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6

 

ジョグジャカルタへ到着頃にはすっかり外は暗くなる。
国内線の乗り継ぎも入れると10時間は越えたかな…時差は-2時間なので時差疲れ的なものはいつも無い。

ここに到着するまで痺れは強くもならず弱くもならず、顔の左側に根をはったまま動くことはなかったが悪化しなかったことには正直ほっとした。。

飛行機を降りて外に出た瞬間夜空を見上げて空気を吸い込む。。何も視界を遮るもののない滑走路を歩いていると心身が次第にほぐれてくる。
気合いなど必要なかったのでは…歩くほどリラックスしてきて気持ちいい。

ジョグジャにくるといつも感じる…何か持ってるとか何かをしているとかそんなことではなく、今の私、一人の存在として愛してくれて、大きく手を広げて迎えてくれるようなエネルギーに必ず満たされる。
足からお腹、そして心へどんどん下から温かさが上昇してきて完全に満たされ包まれていく。。

『ただいま…』

滑走路から空港建物に入ると空調の大きな音と共に、目が覚めるほどのレモンの芳香剤の香りが勢いよく鼻腔を直撃する。日本でなら衝撃的だけどここでは懐かしさと楽しさに変わってしまう。

レモンを通り過ぎてそんなに歩くことなくスーツケースを受けとる場所があり、適当な場所を見つけスーツケースが出てくるのを待つ。
そんなに広くないのでここはいつも人で溢れていて、インドネシア語からジャワ語色んな言葉が飛び交い賑やかだ。
そしてここならではのあの大好きな香りも当然してきて、着いた喜びを実感する。

空港にはそれぞれの国の香りがあるだなんていうけど、まさしくジョグジャの空港のこの香りが大好きだ。
出口の開いた扉からも香りが入ってきてるのだろう…外できっと充満してるはずのあの香り。
この国の主流となっているタバコ、クレテックの香りに思わず笑顔になる。

「気管支喘息にもいいんだよ」なんて話を『タバコなんだからそりゃ~ないでしょ~』と思いながら聞いてたけど、どうやら作られたきっかけは本当に気管支喘息の治療目的だったと知ってビックリしたものだ。

タバコの葉だけではなくクローブ等が入っているので通常のタバコとは全然香りが違う。
体への影響も通常のタバコとは違うという研究結果もあるらしい。

湿度と香りの相性もよく、ほんのり甘くスパイシーな香りがいっそう魅力的に感じる。
タバコは吸わないけど、この空気に漂ってる誰かが燻らせた香りが一番好きなんだと思う。
この国の気候と相まって完成するアロマであり、個人的にはかなりの癒し力がある。

そういえばサイキックの方もこのタバコをよく燻らす。
煙がやはり重要らしく、サイキックになってからタバコを始めた方もいると確か聴いたな。。

日本も全てこのタバコになってくれたら分煙でなくてもいいかもなと妄想を一瞬してはみたが、、日本の気候ではここまでの香りにはなってくれないんだな…きっと。

クレテックの香りを堪能しながら、スーツケースをみんなで協力して回収し、スムーズに全員分の荷物が出揃った。

出口にぞろぞろ向かうと、扉のすぐ近くに毎度お世話になってるBさんが迎えに来てくれているのが中から見えた。
大きく手をふると、いつもの笑顔で手をふり返してくれた。

長髪で褐色の肌、目鼻立ちがはっきりしていて白いシャツをさらっと着こなす相変わらず素敵な男性だ。
普段は自身のダンスカンパニーを持ち、国内外問わず大活躍で、近隣の国々はもちろん日本にも何度か公演に来てくれてる。
人望も厚く、兄貴的存在、父親的存在でもあるかな。。
Iさんとは舞踊のお仕事で長年のお付き合いがあり、この旅も含めた他のお仕事なども一緒に行っていて、時に現地スタッフとなり、この旅の計画やリサーチ、現地での段取り、旅が始まってもそばにいてくれて私たちのサポートをしてくれる。

挨拶を簡単にすませ、混雑し始めた空港を早々と後にして駐車場まで移動する。

Bさんと一緒に迎えに来てくれたホテルのスタッフさんと友人の背中を目の隅に置いてついていきながら、景色や風、香りを楽しみ身体をジョグジャにどんどん馴染ませていく。

今は乾季なのでそこまで暑くはなく心地いい湿度の風にまじり排気ガスの匂いがしてくる、、日本にいてもこの香りに出会えば瞬間で脳内はジョグジャに飛んでしまう。

ディーゼルだろうか?バイクの排気かな…日本の道路ではたまにしか出会えない匂いで、ここにきたらこの匂いに必ずあえるのですっかりジョグジャの匂いとして脳内にインプットされている。

やはり温度と湿度が関係してるのだろうか?
排気と湿度…時々熱を含んだアスファルトの匂いも少し混ざる。この匂いにはジョグジャを思い出すときめきと、夏の哀愁感があってなんとも胸がきゅんとしてしまう。

身体が馴染みだしたタイミングで、ホテルの車を停車させてる駐車場に到着した。
ささっと車に乗り込み直ぐに出発する。
日本で話しきれなかった近況報告などですぐ笑いがたえない賑やかな空間になりジョグジャの道を走っていく。

今回泊まるホテルは何度か名前が変わったり持ち主が変わったり、古さは感じさせないけどかなり歴史のある建物だ。

ホテルの中はロビーからヨーロッパとジャワ・現代とアンティークが美しく共存する空間で、そのロビーには入り口真正面に外からは見えない区切られた部屋があり、そこは全てが美しいアンティークの調度品でまとめられていて、ソファーでくつろげるようになっている。

入口から左側にフロント、右側に歩いていくと足元はガラス張りの板にかわり、その下には水が流れいて魚も泳いでいる。そこをガラスの扉を開けて渡ると、ジャワらしい上品で落ち着いた色合いとアンティークで統一されたバーやレストランなどのエリアにはいる。

レストランから噴水のある中庭を抜け廊下を歩くと大きなプールやスパ、更に奥に行くと客室だけではなく、会議やパーティーなど色んな催しに使われてる部屋もあり、 現地の人達にも親しまれる身近なホテルでもあるようだ。

空港からさほど時間もかからずホテルに到着しチェックイン手続きを済ますと、少し遅めの夕飯をレストランで食べることになった。
みんなで明日からの話だったり、笑いが絶えない面白い話で盛り上がりながら食事を楽しみ、お皿が空いても話は止まらずあっという間に時間は深くなっていた。

明日から始まる修行に備え解散し、それぞれの部屋に移動する。
みんなは部屋が近いらしく私だけ途中で別れて違うエリアに入っていく。先程までの賑やかさとのギャップが少しさみしいな…

私の部屋は珍しく1人離れ、今まで泊まったことの無い1Fの一番奥の部屋になっていたのだ。。

インドネシアの旅はホテルでのミステリー面白びっくり経験も多いので、何度も来ていて安心しているホテルとはいえ、入ったことのないエリアの部屋は少し緊張する。

ホテルは精霊や霊などの先住民が多く住んでいる場合があり、 8割くらい…殆どはご挨拶をすることで何事もなく滞在させてもらえる。
『少しの間お世話になります』から、滞在中は、『いってきます』と『ただいま』の挨拶すると仲良くしてくれる存在もたまにいてくれて、素敵な体験もあった。

始めて歩く気がする長い廊下を奥まで歩く。こんな奥まで部屋があったのか。。鍵を開けいつも通り挨拶をして部屋に入る。
基本的な作りは一緒だけど、、少し暗い気がする…窓の外は石の壁があり景色はみれない。
暗さはこのせいか。

明日から毎日海や木々が見れるし今夜寝るだけだと思えば景色無しは気にならない。

スーツケースを開けて、小さく畳んだナイロンのボストンバッグを出し、海のホテルに行くために2泊3日分の荷物を移していく。

大荷物での移動は大変なので、帰国前にもう一度泊まるこのホテルに大きい荷物を預けていくことになっていた。

海のホテルはやはりまだ完全な再開・フル稼働ではなく、以前のように使える部屋も少ないようだ。
私の泊まる部屋はエアコン無し水シャワーだけど、あの場所は山の中でもあり、海からの風も止むことなく気持ちいいので、エアコン無しで水シャワーでもきっと快適だろうなと説明を聴いていても楽しみでしかなかった。

そもそもあのホテルでエアコン使った記憶がない、、シーリングファンのみで心地よく過ごせたし、海の音を聴きながら特別な場所に何年ぶりかに泊まれるというだけでもう完全完璧なのだ。。

いや…願っていいのなら1つだけ、、最初の頃にいたシェフが作ったナシゴレンがやっぱり食べたい。。
何年もインドネシアに通っていて、あのナシゴレンと付け合わせのアチャールを越える味には一度も会えてない。。。いやいや…さっき夕飯食べたばかりなのに。
脳内がナシゴレンに支配される前にもう一度時間を見直しておこう。

移動した初日にお世話になるサイキックの皆様と顔合わせと説明でそのまま修行が始まる、休憩入れつつ14時~27時まで続く修行が2日間。

明日からホントにはじまる。。

ここに至るまでに起き続けたこと、今もしぶとくあるこの痺れも、この期間で変われるはず…

あれ…興奮して気分が良くなった気がしてたが、間髪いれず用意したりでさすがに少し疲れてきた。
やはり普段と違う体調だからだろうか?
ちょっとだるさを感じる。

シャワーでスッキリしてもう寝よう。。。

 

つづく

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